「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」は、覆面芸術家として知られるバンクシーが監督したドキュメンタリー映画です。
謎に包まれたバンクシーに密着したドキュメンタリーではなくバンクシーが監督したという異色の作品です。
ドキュメンタリーですが、どこまで本気作っていて、バンクシーはどのような意図やメッセージを込めているのか考えるのも楽しい映画です。
目次
映画:イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ・概要
公開 | 2010年 |
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監督 | バンクシー |
主演 | ティエリー・グエッタ |
TOMATOMETER | 95% |
ティエリー・グエッタという気の良いおっさんがいまして、四六時中カメラを回しているという趣味というか性癖のようなものを持っています。
自称映像作家でもある彼は、知り合いの路上アーティストに同行しゲリラ的な撮影していました。
ティエリー・グエッタの目的は、世界的に有名ではあるが正体不明の芸術家バンクシーのドキュメンタリーを撮ることです。
運良くバンクシーに近づき撮影できましたが、完成したものがとても観れたものじゃないとバンクシーは思い、
逆にこの変人映像作家ティエリー・グエッタのドキュメンタリー映画を作ってしまおうと考え、ティエリー・グエッタのぶっ飛んだ行動をドキュメンタリーにした映画になります。
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覆面芸術家バンクシーのドキュメンタリーの予定だったが
映画の冒頭でバンクシーにどんな映画なの?というインタビューが入り、
バンクシーのドキュメンタリーを撮ろうとした男の映画だとバンクシーは答え、主人公となる男の説明が行われます。
路上アートは儚い運命にある芸術なので記録する人間が必要であったということもあり、
主人公の映像作家ティエリー・グエッタと関係する縁ができたと語ります。
ですが、ティエリー・グエッタは記録に向かない映像センスの持ち主で芸術家に転向し、
その過程が、イグジット・スルー・ザ・ギフトショップというドキュメンタリーになっています。
変人映像作家ティエリー・グエッタのドキュメンタリーに!
ティエリー・グエッタは、ロサンゼルスに住むフランス人です。
古着店を経営し家庭を持つ良い父親という感じの男ですが、奇妙なな習慣というか趣味があります。
片時もビデオカメラを離さないであらゆる時も撮影をしているということです。
もうそれは中毒というか病的なほどに。
見ず知らずの人や出会った有名人やセレブなども構わず撮影している様子が残っています。
ですが、1999年にフランスに里帰りした際に運命を変える出来事が起こります。
芸術としてのストリート・アートの世界も少し見える
里帰りしたティエリー・グエッタは、いとこのアーティスト活動を撮影します。
いとこはモザイクの手法でインベーダーのタイルを制作し、待ちの壁や橋などあらゆる場所に貼っていくという活動をしています。
スペース・インベーダーの名で知られる新世代のアーティストだったのです。
これをキッカケにティエリー・グエッタは、ストリートアーティストに密着し撮影をしていくという活動を始めます。
- いとこのインベーダー
- 目を閉じたキャラクターを描くミスター・アンドレ
- 影を塗料でなぞるゼウス
- オベイのシェパード・フェアリー
- シーザー
- ネックフェイス
- スィート・トゥーフ&サイクロプス
- ロン・イングリッシュ
- ドットマスターズ
- スウーン
- ボーフ
- バフモンスター
彼らの活動を撮影しサポートし大きな影響を受けます。
撮影を重ねていくうちにティエリーは、ストリートアートの記録映画を作ることを思いつきます。
そうした意味でストリートアートの活動の記録を観ることもできます。
撮影を通して、様々なアーティストと関わることでバンクシーと縁を持つようになりました。
ミスター・ブレインウォッシュとして個展開催を目論む
撮影していくうちに自分でもストリートアートの活動にハマっていったティエリー。
また、バンクシーにそういえば記録映画はどんな具合なんだと聞かれ、これまでのものを編集し作品にします。
バンクシーはあまりにもひどい出来の映画を魅せられ、言う言葉が見つからず斬新だとだけ伝えると、
ティエリーは、良い映画だと褒められたと勘違いしました。
バンクシーはこれ以上コイツには映画作りは無理だと考えて、厄介払いも兼ねてアート活動を代わりに勧めます。
またまたその言葉を真に受けたティエリーは、バンクシーの指示でアートをやるなんて!
バンクシーにアートの才能を認められた!ともともとやりたかった気持ちもあり、
ミスター・ブレインウォッシュとして個展開催を目指し活動を始めます。
バンクシーの芸術に対する皮肉やジョークなのか?
バンクシーの芸術に対する考えは分かりませんが、彼の作品からは皮肉やユーモアを感じます。
バンクシー自身もバンクシーの名が大きく勝手になり、自分の作品が高値になったり話題に上ることについて、
ある意味で、冷笑しているような感じもあります。
バンクシー自身は金のためではなく自分自身の表現をしていたら勝手に回りが騒いでたみたいな部分もあるのでしょう。
一方で、ミスター・ブレインウォッシュことティエリー・グエッタは大した才能もなく、
バンクシーが適当に芸術家でもやれば?という言葉を真に受けて、パクリみたいな作品を量産し、
個展準備や作品制作、選びの関しても無責任な状態を晒しています。
ですが、話題にはなりバンクシーの名前もあることでミスター・ブレインウォッシュの評判や個展は上々で成功してしまい、
芸術に対する大衆の感覚や近代芸術に対するよくわからない評価を、
バンクシーは、映画イグジット・スルー・ザ・ギフトショップを使って皮肉っているようにも感じます。
アーティストそのものや作品ではなく、話題だからとか著名な人間が推薦していたり関わっているから良いという情報だけで判断しているみたいなね。
映画:イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ・感想
オープニングのゲリラ的、路上芸術活動、ストリートの映像の詰め合わせの編集を観ただけで、
バンクシーの監督の才能が良いとわかります。
まぁ素材だけはティエリーが腐るほど撮っていたのでその点は功績ですね。
映像作家というより撮って終わりという性質しかないのでティエリーはただの記録係でしかないともいえます。
あとバンクシーの活動も撮影に成功したというのもデカいですよね。
まぁでも今作はバンクシーの活動を追う映画ではないのである意味裏切られた感じもありますが、
ストリートアートの実態と変人カメラおじさんの記録としても楽しめるドキュメンタリー映画になっていますし、
英国人のバンクシーのセンスかロックやパンクのテイストを感じる映画になっていてスタイリッシュです。
イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ、興味深い!
バンクシー初監督作映画のイグジット・スルー・ザ・ギフトショップは、カッコいい映画です。
バンクシーに密着することに成功したティエリー・グエッタのドキュメンタリー映画になるとは予想外ですね。
ですが、誰やねんコイツ?っていう作りにはなっていないですし、
ストリートアートの活動やバンクシーの活動も映画では記録されていて楽しめます。
イグジット・スルー・ザ・ギフトショップを観るとすべてバンクシーが仕組んだ風刺作品のような気もしてきます。
個人的にミスター・ブレインウォッシュの良さはよくわかりませんが、
ティエリーの行動力とエネルギーや部分的な人間性には魅力も感じます。
とにかく百聞は一見に如かずですので、
言いたいことは、
「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」、オススメです!
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