「クロニクル」は、ある出来事がキッカケで超能力を手に入れてしまった高校生3人が主役のSF映画です。
超能力を得たことで、生活や考えに変化が生まれて行く過程や高校生という多感な時期や家庭環境、境遇の差などで3人の個性や超能力に対する捉え方などを巧みに描いています。
また、日常を記録しているという視点でのアングルが斬新で超能力の模写も楽しめる作品です。
目次
映画:クロニクルのあらすじ・概要
公開 | 2012年 |
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監督 | ジョシュ・トランク |
主演 | デイン・デハーン |
TOMATOMETER | 86% |
カメラで日常を撮影しようとしているアンドリューは、病気の母親と仕事をしていない父親と暮らしており、根暗でとっつきにくい性格の少年です。
学校では軽くいじめられてもいますし、家では父親から暴力を受けています。
親戚でもあり同じ高校に通い車でも迎えに来てくれるマットは性格が明るく、上手く立ち回っていて、それなりに無難に過ごしています。
マットにパーティーに誘われたアンドリューは行ってはみたものの、楽しめないで独りで過ごしていました。
そんな時に、生徒会長にも立候補している人気者のスティーブが、不思議なものを見つけたので撮影してくれと声をかけてきます。
アンドリューとマットとスティーブは、その不思議なものの正体を見に行き、隕石のような謎の物体を発見して接触します。
そのことが原因で3人には超能力が備わります。
超能力を得たことで3人がこれまでとは違う運命に向かうことになります。
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アンドリューは超能力に目覚めて変化していく
高校生3人が主役とも言えますが、
実質的なクロニクルの主人公は、アンドリュー・デトマー(デイン・デハーン)になります。
主な話や映像自体も、アンドリューが撮影しているカメラの視点で展開されて行きます。
また、超能力の才能が3人の中でも一番際立っているのがアンドリューです。
超能力を得たことがキッカケで、マットやスティーブと親友になり、生活や性格に明るい兆しも見えてきます。
ですが、母親の状態も良はならず、貧困なのも変わりませんし、父親も相変わらずです。
超能力やスティーブの力添えで、学校生活も改善されて人気も出出してましたが、パーティーでやらかしてしまい、それもダメになってしまい、鬱屈していいきます。
誰よりも強い力を持っていながら、抑圧された状態や環境にあるアンドリューは、徐々に考え方を変えていき、超能力を本能の赴くままに使いだしてしまいます。
人間を超越した頂点捕食者の考えと「AKIRA」の鉄雄っぽさ
アンドリューは、強大な力を得たことで、自分が人間を超越した存在であると考えます。
また、これまで自分を下に見てきた人たちに対しても強い怒りと恨みを抱えています。
部屋にいた虫を能力で殺すシーンは静かながら、アンドリューの狂気を感じるシーンです。
どうしようもなさ、無力感がアンドリューにはありましたが、力があるものが支配するべきという考えに変わって行ってしまいます。
金がなく病気の母親の薬を買うために強盗をしてしまい、力を暴力として使用してしまいます。
その際に、事故にあい病院に運ばれ、父親から母の死を聞かされ、お前のせいだと罵られ、これまで保っていた何かがキレてしまいます。
手術着で暴れるアンドリューは、「AKIRA」の鉄雄をもの凄く思い起こさせます。
鬱屈し感情から力を解き放つことの恐ろしさと、アンドリューが抱える悲しみや闇の大きさが伺えます。
能力者であり友人のマットとスティーブ
マット・ギャリティー(アレックス・ラッセル)は、アンドリューの従兄弟で同じ高校に通っています。
マットは、能力を得る前からアンドリューを車で迎えに来てくれていて関りがあります。
けっこうマイペースで、友人たちとつるむタイプではないですが、それなりに学内ではポジションを得ているようで、アンドリューと違い人間関係をそつなくこなしている感じです。
能力を得てからは、少々不器用ではありましたが使いこなせるようになっており、力に対しての危険性も感じていてルールを提案したのもマットでした。
マットは力を得てからの方が、人間的に成長した人物でしょう。
スティーブ・モンゴメリー(マイケル・B・ジョーダン)も同じ高校ですが、アンドリューとはパーティーで初めてちゃんと話した程度の関係でした。
このパーティーでの出来事が3人に超能力を与えるキッカケです。
スティーブは、社交的でナイスガイでリア充。
勉強も運動も出来るというタイプでアンドリューとは正反対とも言えますが、気さくな感じで人当たりも良く面倒見がいいタイプです。
生徒会長に立候補しているし、将来をしっかりと計画しているので人間的に出来ています。
スティーブは、超能力でテンションは上がっていますが、危険性も理解しており遊び程度で満足していて、アンドリューと違い依存していません。
マットとスティーブは、超能力には危険があり、容易には使わないほうがいいと考えている部分が、アンドリューと大きく違う部分です。
映画:クロニクルは超能力の描き方が良い!
クロニクルは、超能力を得てから練習するシーンや超能力自体の描き方がとても良いです。
始めは小石を動かしたり、止めたり程度しか扱えませんでしたが、練習を重ねることでいろいろなことができるようになります。
無理をし過ぎると体に負担がかかってしまい、鼻血が出たり不調が起こりますので、力を使いこなすためにトレーニングを3人は行います。
力を使いこなせるようになり、物体の破壊や空を飛ぶなどの超人的な力を手に入れており、それらを自在に操れるということを3人は知ります。
ショッピングモールでイタズラ的にトレーニングするシーン、空を飛ぶ訓練のシーンや力を使って遊ぶシーンは、観ていてとても楽しいです。
ですが、トレーニング中のアクシデントが3人の考えや超能力に対しての考え方の違いを暗示するキッカケになります。
アンドリューが力を使い過ぎて被害発生
アンドリューもトレーニングとイタズラ心で、走っている車に向けて力を使うと、力の加減のミスをして、相手の車が池に転落してしまいます。
アンドリューもそのようなつもりはなかったんですが、この際の行動が他の二人と違い、アンドリューの危うさを感じ取れます。
マットとスティーブは、池に飛び込み助け出そうとしたり、救急車や警察に連絡して助けを呼ぼうとします。
ですが、アンドリューは自分は悪くないと言い訳をしながらカメラを回し続けて、助けようとしません。
このシーンからも、アンドリューが他の二人に比べて未熟な面があるということと、自分勝手、自分本位な部分があるということが読み取れます。
アンドリューの危うさと暴走
アンドリューは、家庭環境や日頃のストレスもあって、精神的に危うい部分があります。
また、超能力は感情が高ぶっている時は使わないほうが良いという認識は3人の中で共通しています。
ですが、感情が高ぶっている中で使った超能力によってスティーブを殺してしまいます。
後悔の念はありましたが、孤独を強めたアンドリューは、パーティーの失敗をいじられたりで、いじめられた際にも力を使いますし、母親の薬を得るための強盗にも力を使います。
父親の暴力に対しても超能力で反抗します。
母親が亡くなり、怒りが頂点に達したアンドリューは、頂点捕食者として力を爆発させて破壊活動を行います。
マットがアンドリューの暴走に気がつき、警察も動員されて、アンドリューを止められるのはマットしかいない状態になってしまいます。
映画:クロニクルのネタバレ・感想
思春期の少年と超能力がテーマのクロニクルですが、冒頭からアンドリューの闇を感じさせてくれるので、コイツがしでかすんだろうなってのはわかります(笑)。
ですが、そこまでのプロセスがしっかり描かれていて、アンドリューに同情も出来ます。
でも、アンドリューのキレっぷりが素晴らしくて暴走しだしたときは同情も吹っ飛んでスッキリできるのが見事です(笑)。
スティーブもマットも良い奴で、アンドリューも悪い奴ではありません。
何かが違ったら、あの時ああしていればって思いに駆られる部分も思春期の高校生3人が主役ならではの味ではないでしょうか。
アンドリューを止めた後に、マットが目を覚まして飛び去るシーンや、アンドリューが行きたがっていたチベットを訪れたマットの行動や言葉が、まだ終わらない何かを感じさせてくれます。
クロニクルは続編が予定されているそうですが、大分時間が経っていますし、主人公は3人中2人が死亡している設定なので、どうなるのでしょうかね。
映画:クロニクル、オススメです!
クロニクルは、大友克洋の「AKIRA」や「童夢」が好きなら楽しめると言いましたが、知らない方でも楽しめると思います。
派手さはそこまでないかもしれないですが、SFなのに妙なリアル感がありますし、超能力を持ってはいるものの等身大の高校生の悩みというのを感じられます。
超能力があるないという部分よりも、人間関係や貧困、生活などの悩みや不安、葛藤、ストレスが大きな問題です。
ちょっとしたことがキッカケでどうにでもなってしまいそうな、高校生という多感な時期を上手く描いています。
あとは、誰もが思い描く超能力の模写を自然に表現しているのも楽しめる部分です。
限られた予算で大作というわけでもないクロニクルですが、スタイリッシュで安っぽさはありませんし、アイデアが勝利した素晴らしい作品です。
とにかく百聞は一見に如かずですので、
言いたいことは、
「クロニクル」、オススメです!
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